最近報告が増えている鶏卵による消化管アレルギーについて

食物アレルギー

近年、学会でも報告が増加している、鶏卵の消化管アレルギー。

私も数年前にこの疾患を持つ患者さんに出会い、自分の常識が覆されたのを今でも思い出します。

【症例】

乳児後期の患者さんで、離乳食として与えた卵黄を摂取するとその2-3時間後から嘔吐を繰り返すと言うエピソードを3-4度程認め、かかりつけ医を受診。

アレルギー検査検査で、卵白・オボムコイド・卵黄全て陰性の為、鶏卵アレルギーではないと思われるが、患者さんのご希望で当院を受診。

エピソードからは卵黄の消化管アレルギーが疑われましたが、当時全卵の消化管アレルギーの報告が数例で、卵黄による報告は僅かでした。

その為、自分でも半信半疑ながら卵黄の負荷試験を行いました。

患者さんは負荷試験中ニコニコしながら嫌がる事なく卵黄を摂取し、予定通り昼食まで終了。

即時型アレルギーの負荷試験であれば退院する、卵黄摂取から2時間以上経過したタイミングで急に嘔吐を認めた。

当日夜、下痢を認めたが、翌日症状なく退院した。

また、後日卵白の負荷試験を行うと、全く症状を認めるとなく終えた。

鶏卵による消化管アレルギーが学会レベルでも話題に挙がる事が少なかった当時、鶏卵のアレルゲンといえば「卵白」が常識であった事(もちろん即時型)を考えると、「卵黄」がアレルゲンになるという事実は私にとってとても衝撃でした。

「我思う、故に我あり」で有名な近代哲学の父デカルトは、「方法的懐疑」という手法により世界全体を疑い物事の本質に迫りました。

我々、アレルギー専門医も日頃から常識(先入観)を疑い、真実を探求しなければなりません。

10年近く前、離乳食の開始を遅らせた(完全除去を続ける)方が良いというのが食物アレルギー界の常識でしたが、現在では離乳食の開始を遅らせてはいけないというのが常識です。

ですが、デカルトの方法的懐疑を用いると今度は「離乳食の開始は遅らせてはいけない」と言う常識を疑う事になります。

また、アレルギーのタイプは異なりますが、即時型牛乳アレルギーは新生児期の粉ミルク摂取は早すぎると牛乳アレルギー発症に傾き、1ヶ月頃からの摂取は牛乳アレルギー発症予防に効果がある事が分かっています。

では、離乳食の一つとして食べ始める卵黄は、その摂取開始時期の違いが消化管アレルギーを発症に影響したりしないのでしょうか?

Nishinoらは卵黄の消化管アレルギーの発症には、卵黄摂取が影響しているかもしれないと報告しています。(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/pai.13406)

卵黄消化管アレルギーの発症卵黄摂取の摂取開始時期に関連があるかどうか完全に明確にはなっているわけではありませんが、少なくとも発症卵黄摂取は関連しているかもしれません。

現時点で上記の疑問に対する解を得るには至りませんが、先ずは今週末に開催される日本アレルギー学会学術大会で新たな発見が報告されるのを楽しみにしたいと思います。

ではまた次の記事にて

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