消化管アレルギーと即時型アレルギーってどう違うの?〜治療の観点から〜

食物アレルギー

今回は、消化管アレルギー(正式には食物蛋白質誘発胃腸炎)の第二弾をお送りします。

前回(https://pediatric-allergy.net/fpies/)はこちら

というのも先ほどツイッターでとても気になる記事を拝見したからです。

その概要ですが。。。

(以下はイメージしやすいように敢えて「消化管アレルギー」と記載しています。)

卵黄の消化管アレルギーと思しきお子さんの母が、卵黄のアレルギーを疑いながらも主治医からは卵黄を積極的に食べるように言われ、卵黄摂取後苦しむ我が子を連れて行った病院で無効だと感じている抗アレルギー薬(ボスミン?、ポララミン?)を投与されるのを防いだというものです。

実は消化管アレルギー(食物蛋白質誘発胃腸炎)は、小児科の間では以前より知られている疾患です。

ただし、我々小児科医が知る有名なアレルゲンは牛乳(粉ミルク)であり、乳児前期頃の赤ちゃんが粉ミルクを飲むと嘔吐や下痢、血便や体重減少をきたす事で知られています。

一方、卵黄による消化管アレルギーは最近専門の学会で報告されるようになったばかりで、アレルギー専門を専門とされない小児科や救急の先生からは認知が進んでいません。

寧ろ、非アレルギー専門医の先生方からすると、鶏卵(正確には卵黄)を食べて、嘔吐頻回でぐったりしている場合は即時型アレルギーのアナフィラキシーショックと思ってしまうかもしれません。

確かに消化管アレルギーも即時型アレルギーも、重症になるとショック症状を起こす事があります。

ですが、両疾患の治療方針は一緒ではありません。

即時型アレルギーによるアナフィラキシーショックの有名な薬といえば、ボスミン(エピペン®︎)であり、もはや一般常識になりつつあるかと思います。

一方、消化管アレルギーにおけるショックでは、2017年に出た海外のガイドラインではボスミンの使用は推奨されていません。

(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0091674917301537?via%3Dihub)

重症化した際に最も重要な処置は、「急速点滴」です。

その量は、1歳(10kg)のお子さんに対して、普段数時間かけて用いる200mlの点滴が10-15分程度で終わるくらいのスピードです。

極端な話、1歳のお子さんが一日必要な水分量を1時間で流し終えると言えば、その極端なスピードが伝わるでしょうか。

次に、重要な処置はセロトニン(5-HT3)受容体拮抗型制吐剤(オンダンセトロン)の静脈注射もしくは筋肉注射です。

このオンダンセトロンというお薬は、抗がん剤の副作用として起こる強い吐き気に対しても有効な程強力な吐き気止めです。

勿論、即時型アレルギーのアナフィラキシーでは使う事はありませんし、恐らく小児科でも腫瘍を扱う医師くらいしか使わないかと思います。

このように消化管アレルギーと即時型アレルギーとでは、ショック時の治療が異なります。

最近報告が増えている卵黄による消化管アレルギーは、今後ますます増えてくる可能性があります。

卵黄を食べた後、頻回に嘔吐して苦しんでいるお子さんを一番初めに診察するお医者さんが、必ずしもアレルギー専門医とは限りません。

その為、私たち専門医はこの疾患概念の普及に努めなければならないと感じています。

そして、離乳食を食べ始めるお子さんをお持ちのご両親へ、もし卵黄摂取後に嘔吐を認める場合はアレルギー専門医の先生に相談してもらうように声をかけていく必要があるかと思います。

今回のツイッターのお母さんのように「疑ったら声を上げる事」が大切です。

この疾患で苦しむお子さんが一人でも減るように、情報発信し私自身も学んでいきたいと思います。

ではまた次の記事にて

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