鶏卵アレルギー発症したらどうした良いですか?

食物アレルギー

0歳から2歳までに発症しやすいアレルゲンとして最も有名な鶏卵に関する話題です。

一般的に鶏卵アレルギーと診断を受けた場合、まさかうちの子が⁉️と驚きつつ、十分に心の準備をする余裕もなく鶏卵アレルギーを持つ子どもとしての日々が始まります。

そして、その生活で留意して頂きたい点がありますので根拠となる論文を踏まえ、ご紹介いたします。

1.鶏卵アレルギーはいつ頃良くなるのか?

どのアレルゲンでも同じだと思いますが、アレルギーがいつ良くなるのかは最も親御さんが気になる点の一つかと思います。

この疑問についていくつかの論文が発表されていますが、今回は重症に偏りが少ないと考えられる論文から、結果をご紹介したいと思います。

遷延する鶏卵アレルギーに関する後ろ向きコホート研究


日本小児アレルギー学会誌,35 巻 (2021) 2 号

沖縄の一般病院で行われた鶏卵アレルギーの後ろ向きコホート研究によると

2歳:12%,3歳:34%,4歳:54%,5歳:68%,6歳:79%と年々鶏卵アレルギーは良くなっていたと報告されています。

尚、良くなっていたという点について、加熱鶏卵1/2個が食べれる事と、加熱が緩い鶏卵の加工品(プリンやマヨネーズ等)が食べれる事と定義されています。

ただしこの結果から、小学校に入る頃には「自然に」8割近い子が良くなるんなら、そんなに心配しなくても良いね!と思われた方は要注意です!

というのも、日本の食物アレルギー診療ガイドラインでは、「必要最小限の除去」という日本独自の方針の元でアレルギー診療を行っているからです。

2.「自然に」良くなるとは?

この点は、以前ツイッターで「自然に」良くなるという言い回しに関するアンケートを行ったところ、一般的な理解としては「何もしなくても、勝手に良くなる」という印象が最も強かった事に驚きました。

この日本の食物アレルギーにおける「自然に」良くなるとは、適切なタイミングで負荷試験を行い、その結果に応じて「必要最小限の除去」を行う事を指します。

一方、欧米では鶏卵アレルギーなど食物アレルギーが判明した場合の基本的な方針は、「完全除去」となります。

その為、欧米での治る(耐性獲得する)という状態が、本邦で一般的に「自然に」良くなるとされる印象に近いかもしれません。

尚、「治る」定義における食材の違い(非加熱鶏卵)はありますが、米国では6歳頃までに良くなる鶏卵アレルギーの割合は49%と報告されており、日本より低い事がわかっています。

そして、鶏卵アレルギーを発症した場合、誰もが先程と同じ確率で良くなるというわけではありません。

この論文以外にも多くの論文でも報告されていますが、鶏卵に関連する特異的IgE抗体値が高い方が、良くなりにくい事が判明しています。

特に1歳の時の卵白の数値(特異的IgE抗体値)がclass4(17.5UA/ml)以上だとclass4未満の場合より、治りにくい(遷延しやすい)ようです。

3.少しでも良くする為にはどうしたら良いの?

先程ご紹介した、鶏卵アレルギーが遷延しやすい(良くなりやすい)因子として、卵白特異的IgE抗体値が高い(低い)事を挙げました。

それでは、6歳までに鶏卵アレルギー治るかどうかは、1歳時点である程度決まっているのでしょうか?

実は、採血の数値以外にも鶏卵アレルギーが良くなるかどうかに関連している要素があります。

それは、鶏卵を摂取しているかどうかです。

Avoidance of Hen’s Egg Based on IgE Levels Should Be Avoided for Children With Hen’s Egg Allergy.

Front. Pediatr., 15 January 2021 

こちらは東京の成育医療センターで行われた研究になります。

6歳時に鶏卵を完全除去していた症例と完全除去を行わなかった症例では、それぞれ鶏卵アレルギーが改善したのは8% vs 53%鶏卵を完全除去しない方が6歳時の鶏卵アレルギーの予後が良いと発表しています。

また、最初にご紹介した論文でも同様の結果が得られていましたが、こちらでは更に卵白特異的IgE抗体値の数値と鶏卵の完全除去を行っていたかの2つの観点から4つのパターン分けを行い結果を発表していました。

(遷延する鶏卵アレルギーに関する後ろ向きコホート研究,日本小児アレルギー学会誌,35 巻 (2021) 2 号より)

この結果によると、鶏卵アレルギーが遷延するリスクが最も高い、卵白抗体値(高)+鶏卵完全除去の場合だと6歳時点で約75%の患者さんが、まだまだ良くなっていませんでした。

一方、最もリスクが低い、卵白抗体値(低)+鶏卵摂取の場合だと、約99%の患者さんが良くなっていました。

そして、最も興味深いのは1歳時点では卵白抗体値が高くても、同時期から鶏卵を摂取していた患者は卵白抗体値が低くて、鶏卵を完全除去していた患者さんと同じくらい鶏卵アレルギーが良くなっていました

注意すべき点としては、この論文は後ろ向きコホート研究として、鶏卵アレルギーが遷延する事と1歳時の鶏卵完全除去が関連している点を述べていますが、1歳から鶏卵を食べると早期に良くなる事を証明した介入研究(ランダム化比較試験)ではありません。

図:エビデンスの強さに関して(出典:Wikipedia)

ですが、日本のガイドラインに則って、適切なタイミングで負荷試験を行い、「必要最小限の除去」を継続する事は、鶏卵アレルギーが遷延するのを予防してくれる可能性あります

現時点で卵白の採血の数値が高くてまだ鶏卵を食べていない場合は、少しでも食べていく方法がないかを今後主治医の先生と相談しても良いかもしれません。

また、どれだけ食べれるかわかる検査(食物経口負荷試験)を行なっていない施設や病院に通院している場合は、食物アレルギー研究会のホームページを用いてご自宅から最寄りの病院を探し、紹介してもらえるように相談してみることも可能です。

以上参考になれば幸いです。

それではまた、次の記事にてお会いしましょう。

2022/3/22 更新

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