近年共働きのご家庭が増えているせいか、自宅でのアレルゲン摂取頻度を増やすのが難しいと外来で耳にする事があります。
食物アレルギー診療ガイドラインにおける「必要最小限の除去」の考えに基づき、普段から負荷試験で陰性だった食材(アレルゲン)を自宅で食べてもらうように指導しています。
ですが、親御さんによっては日々の生活が忙しく、万が一にでもアレルギー症状を認めたら。。。と考え、自宅での摂取が中々進まないご家庭も少なくありません。
また、イヤイヤ期を迎える頃には、アレルゲンだけでなく食事そのものを嫌がるお子さんもいらっしゃるかと思います。
そんな時に私は「食べる回数が多い方が、鶏卵アレルギーは良くなりやすい可能性がありますよ」とお伝えするようにしています。
今回はその根拠としている、論文をご紹介します。
J Allergy Clin Immunol. 2014 Feb;133(2):485-91.
HealthNuts studyという、オーストラリアで行われた大規模前向きコホート研究(信頼性が高い研究手法)から鶏卵アレルギー患者を抽出した研究です。
元々の研究では5276例の対象者が含まれていましたが、この論文では鶏卵アレルギー児158例に鶏卵負荷試験を行い、うち127例を2歳まで経過を追っています。
一方、負荷試験を行わなかった106例のうち28例を2歳まで経過を追っています。
その為、計155例は2歳まで経過を追えたことになります。
しかし、15例は2歳時の負荷試験結果が明確でない為、除外し最終的に140例に対象を絞って検討しています。
大きな結論として、66/140(47%)の症例が2歳で生の鶏卵アレルギーに対して耐性獲得しました。
次に副次的解析の一つである、生の鶏卵アレルギーの耐性獲得に関わる因子についてです。
生の鶏卵に対して耐性獲得しやすい背景の一つに、加熱鶏卵に対して耐性獲得しているかどうかが重要な因子の一つとして挙げられていました。
加熱鶏卵に対して耐性獲得している症例より、耐性獲得していない症例の方が約5倍、生の鶏卵アレルギーが遷延しやすかったという結果が得られました。
また、加熱鶏卵の摂取頻度に関して
月に5回以上加熱鶏卵を摂取していた場合:61%
月に1-4回加熱鶏卵を摂取していた場合:41%
全く摂取していなかった場合:17%
と、生の鶏卵に対する耐性獲得率に差が生じていました。
ほとんど加熱鶏卵を摂取していない症例より、月に5回以上加熱鶏卵を摂取していた症例の方が、約3倍程度生の鶏卵の耐性が得られやすかったという結果でした。
この検討では、
1歳から2歳にかけての時期に関するものである事
日本と違って生の鶏卵に関する耐性獲得について研究している事
と言った、重要な背景があります。
その為、どの年齢でも、何の食材にでも応用できるわけではありません。
ですが、摂取しないor摂取頻度が低いよりはある一定の頻度でアレルゲンを摂取していた方が、耐性獲得に有利に働く可能性があると考えています。
その為、冒頭でのアレルゲン摂取が進まない場合は、敢えて量を減らして安全性を高めた上で摂取してもらったり、ゆで卵白を白米に混ぜ込んでも分からないくらいの量でこっそりと与えてもらったり(イヤイヤ期のお子さんでも白米を食べる子は多い為)して、摂取頻度を高める工夫をしています。
無理に食べさせても、結局継続して食べ続ける事は難しいですからね。
現在「食物摂取頻度が食物アレルギーの耐性獲得に与える影響」という研究が、世界に先駆けて鶏卵アレルギー予防研究を発表された、夏目先生に主導で進められているようです。
私個人としても、食物アレルギーの耐性獲得とアレルゲンの摂取頻度は、影響しているという臨床的な感覚もあり、夏目先生の研究には注視していきたいと思います。
ではまた次の記事にてお会いしましょう。
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