前回、負荷試験前に中止しておくお薬について解説しました。
今回は食物アレルギーで症状が出た際の薬の使い方に関する解説です。
結論からお示しすると
抗ヒスタミン薬内服(静脈投与、筋注):皮膚症状
β2刺激薬吸入(内服):呼吸器症状
ステロイド内服(静脈投与):消化器症状(?)、二相性反応予防
アドレナリン(ボスミン)吸入:呼吸器症状
アドレナリン(ボスミン)筋注:循環器症状、神経症状、皮膚症状、呼吸器症状、消化器症状
と言った感じです。
・抗ヒスタミン薬(アレグラ、ザイザル、クラリチン、ポララミン等)
ヒスタミンは身体中にある肥満細胞から放出される物質の一つで、皮膚の発赤や蕁麻疹の原因となる物質です。
抗ヒスタミン薬は内服後約20-30分で皮膚の痒みが改善し、徐々に発赤が改善してきます。
ただし腫脹(浮腫み)に関してはが引くのは翌朝だったという事もあり、症状が長引く事もあります。
食物アレルギーで出現する症状の90%近くが皮膚症状である事を考えると、日常的に最も使われる事が多いお薬の一つと言えるでしょう。
・β2刺激薬(メプチン・サルタノール等)
β2刺激薬のβとは筋肉を動かす信号の受け皿(受容体)の種類の一つです。
特にβ2受容体を刺激すると、平滑筋を緩める(弛緩)させる方向に働きます。
食物アレルギーの呼吸器症状において、気管支喘息のように気管支の筋肉(平滑筋)の収縮により、気管支が狭くなった結果ゼーゼー(呼気時喘鳴)認める場合があります。
この気管支の収縮して狭くなった気管支の筋肉(平滑筋)を緩めて広げる(拡張する)事で、ゼーゼー(喘鳴)を改善させます。
吸入後効果は5-15分程度で出てくる印象です。
最近は、食物アレルギー症状における腹痛にも効果があるのではないかとの報告があがっており、要注目の薬剤の一つだと思っています。
・ステロイド薬(プレドニン、リンデロンなど)
昔からある、炎症を抑えるお薬の一つです。
体内に入ったステロイド薬は、細胞内のDNAレベルに働きかけ、様々な遺伝子に働きかける事で体内の炎症に働きかけます。
この複雑な作用機序の影響で効果が現れるまでの時間は内服(もしくは静脈注射)してから、数時間後とされています。
以前(食物アレルギー診療ガイドライン2012の頃)は腹痛にはステロイド内服を進めていた時期もありましたが、現在ではアナフィラキシー時の二相性反応予防として使われる事が多い印象です。
このように、内服してから効果の発現まで時間がかかる事と、アナフィラキシー時に使うかどうか検討するレベルのお薬なので、内服薬として自宅や学校で使用する意味は少ないと考えています。
・アドレナリン(ボスミン)吸入
エピペンにも使用されているアドレナリン(ボスミン)は主に強力な血管収縮作用や強心(心臓収縮力を高める)作用があります。
そのうち、血管収縮作用の一つに浮腫を改善させる効果が吸入した場合にも発揮されます。
小児領域だとクループによる気道の浮腫や、集中治療領域だと抜管(人工呼吸の為の挿管チューブを抜く事)後の喉頭浮腫の治療に用いられます。
吸気時喘鳴と呼ばれるストライダーにも有効で、負荷試験では医師の観察のもと使用される事もありますが、気道(喉頭)の浮腫はアナフィラキシー症状のグレード3に相当する為、基本的には次に説明するアドレナリン(ボスミン)筋中の適応になります。
・アドレナリン(ボスミン)筋注(エピペン)
言わずと知れた、アナフィラキシー治療薬です。
アドレナリン(ボスミン)吸入で前述したように、強力な血管収縮作用や強心(心臓収縮力を高める)作用があります。
全身の血管を収縮させる(筋肉のα受容体の作用)事で循環器症状(ショック状態)を改善させ、肺の気管支に働けば気管支を拡張させる事で呼吸器症状(呼気時喘鳴)を改善させ、喉頭の浮腫を軽減する事で呼吸器症状(吸気時喘鳴)を改善させるなど全身に効果を発現させます。
その効果発現時間は数分程度であり、即効性が高い事が特徴です。
一方で、効果持続時間が20分程度と短い為、アナフィラキシーの勢いが強いと一旦改善した症状が時間とともに再燃する場合があり、注意が必要です。
その為、アナフィラキシーに対してエピペンを使用したら、すぐに救急車を呼び病院受診する事が重要す。
実際に病院受診後にアナフィラキシー症状が再燃し、二度目のアドレナリン(ボスミン)投与をする事も少なくありません。
また、我が子や教え子に注射する(針を刺す)という行為は、生半可な気持ちでは行えない為、日頃からエピペンを接種する練習やアナフィラキシーが起きたらどのように対処するかシュミレーションしておく事をオススメしています。
本日は以上となります。
もし、お子さんにアレルギー症状を認めたとしても、お薬を適切に使って速やかに症状が良くなるよう一緒に勉強して行きましょう。
ではまた次の記事にて
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