複数食物アレルギーを有するお子さんの指導方法

加工品

今回はツイッターで話題に上がっていた、食物アレルギーの原因食材が複数ある場合、私がどのような点に気をつけながら栄養食事指導を行なっているかについて解説したいと思います。

先ずは、私のツイートから結論です。

①耐性獲得しやすい食材を積極的に進める

②成長に必要な栄養素を考慮する

③同時に進める食材は二つ程度にする

④耐性獲得しにくい食材は完全除去にしないように努める

⑤出来るだけアレルゲンを嫌いにさせない

以下、解説です。

①耐性獲得しやすい食材を積極的に進める

食物アレルギー診療ガイドライン2021の食べることを目指した食事指導には、「日常的な摂取機会が多く、将来の耐性獲得が期待できる食物(鶏卵・牛乳・小麦・大豆など)にアレルギーのある乳幼児に対しては、食物除去を必要最小限に留めて、可能な範囲で原因食物を摂取する指導を行う」と記載されています。

日常的に摂取する機会が多い食材の中でも、特に抗体価が低い食材摂取(誤食)時に強いアレルギー症状を認めなかった食材は積極的に負荷試験を行い、摂取可能量を評価しゆくゆくは日常摂取量まで摂取可能であるか評価します。

尚、私は負荷試験から耐性獲得までの期間は一食材につき約1-2年要する事を想定しています。

②成長に必要な栄養素を考慮する

成長の途中にある食物アレルギーを持つ児で問題になるのは、やはり栄養(カロリーや栄養素)です。

例えば、鶏卵は実は栄養バランスのとても優れた食品の一つであることをご存知でしょうか?

5大栄養素といえば、糖質・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルですが、鶏卵は良質なタンパク質を有しています。

なぜかというと、体にとって重要な必須アミノ酸(タンパク質の成分)がどの程度含まれているかを示す栄養評価指数(アミノ酸スコア)が100である事に起因します。

つまり、全ての必須アミノ酸が理想的な量で含まれているのです。

その為、アレルゲンとして鶏卵を摂取するだけでなく、体を作る栄養素として鶏卵(先ずは卵黄から)の摂取を進めたりします

他に、牛乳はカルシウムを多く含む食材として有名ですが、牛乳アレルギーのお子さんの場合はカルシウムが不足しやすい事が知られています。

その為、豆乳や豆腐(カルシウムの含有量は牛乳の1/3-1/2程度)やアレルギー用ミルクを積極的に勧め、カルシウム不足を予防したりします。

③同時に進める食材は二つ程度にする

複数食材のアレルギーがあると、早くから摂取した方が良いのではと思い、どんどん複数の食材に関する負荷試験を進めたくなるかもしれません。

ですが、複数の食材を自宅で摂取するのは準備が煩雑になりやすく、それを毎日続けるのは余程根気がある方でも心が折れかねません

私の栄養食事指導におけるポリシーは「簡便」かつ、「継続可能」である事です。

食物アレルギーの耐性獲得には継続が一番効果的ではないかというのが持論の為、自宅でのアレルゲン摂取はできるだけシンプルにし、ご家族が続けやすいような指導を心がけています。

④耐性獲得しにくい食材は完全除去にしないように努める

近年の研究で、アレルゲンの完全除去は耐性獲得にとってマイナスの因子である可能性が示唆されてきています。

その為、抗体価が高い食材や過去にアナフィラキシーを起こした食材であっても、アレルゲン性の低い食材(例えば卵黄や小麦と一緒に高温で調理した加工品)であったり、自宅での摂取量を減らしたりして、完全除去にならないように気をつけています。

そうすると、「③同時に進める食材は二つ程度にする」と矛盾するのでは?と思われるかもしれません。

そこは一食材目が耐性獲得間近であるタイミングから始めたりして、なるべく自宅でアレルゲン摂取がご家族の負担になりにくいように注意しています。

⑤出来るだけアレルゲンを嫌いにさせない

一番難しくて、とても大事なのがこの項目だと思います。

何度もアナフィラキシーを起こしたり負荷試験の度に症状を認め完全除去が続いたりしていると、次第に食物アレルギーを持つ患者さん本人がアレルゲンを食べる事だけでなく、アレルゲンの存在そのものを嫌いになっている場合をしばしば経験します。

そのような場合、ある程度成長してからアレルゲンの摂取が身体的に摂取可能になっても、心理的に摂取ができない為に、耐性獲得に至れる可能性が高いにも関わらずアレルゲンの摂取が進まない患者さんを経験した事が過去に何度もありました。

逆に言えば、アレルゲンを好きでさえいてくれれば、我々専門医や栄養士が協力して摂取可能なアレルゲン(もしくは加工品)の紹介が可能な場合が少なくありません

そして最後になりますが、今回の指導方法は私の考えに基づいている為、もしかすると一般的な食物アレルギーの栄養食事指導とはズレているかもしれません。

ですので、ブログをご覧くださっていらっしゃる皆様には、今回の記事は参考程度に留めてもらっておくのが良いかもしれません。

ですが、かかりつけ医の先生と負荷食材の相談を行う時に、これらの情報から考え方を知ってもらい、少しでもお役に立てばとても嬉しいです。

では、また次の記事にてお会いしましょう。

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