前回食物アレルゲンについて学ぼう〜基礎編②〜にて、食物アレルゲンと加熱による変化について解説しました。
- 加熱
- 消化
- 発酵
本日は、「消化」と「発酵」について解説したいと思います。
・消化について
ヒトの体内では口腔内で食物を咀嚼(噛み砕いた)した後、胃液(ペプシン)と膵液(トリプシン、キモトリプシン)といった消化酵素(プロテアーゼ)が働いて、タンパク質を分解(アミノ酸の結合が切断)します。
この「消化酵素によって食物の分解される事」を消化と言います。
皆さんも理科の授業でこの「酵素」について耳にした事があるのではないでしょうか?
酵素とは化学反応を促進するタンパク質を指します。
酵素の特徴として、酵素そのものは変化せずに、化学反応の速度を速める事ができます。
そして、消化の作用によりタンパク質における立体構造が壊れる事で、前々回の記事で解説した連続性エピトープのアミノ酸結合の連続性が保てなくなったり、構造的エピトープの構造が変化したりする事で特異的IgE抗体との結合性が減弱して、アレルギー反応が減弱したります。
・発酵について
「発酵」は微生物が自身のエネルギーを得るために行う活動の結果、ヒトに有用な物を作り出す時に用いる言葉です。
一方、ヒトに無用(有害)な作用を持つ物を作りだす場合は「腐敗」と言います。
生化学的な見地からすると、微生物が自身でエネルギー(ATP)を作る際に最も効率良い方法は「呼吸」(酸素(O2)を用いて、グルコースを水(H2O)と二酸化炭素(CO2)までしっかり分解)と言います。
逆に酸素(O2)を用いずにグルコースをある程度エネルギーを残したまま分解(乳酸やアルコール等)した状態を「発酵」と言います。
そして、発酵は菌の種類によって分解する材料が異なります。
例えば、パンやビールにも使われる酵母はグルコースを取り込み、二酸化炭素(炭酸ガス)とエタノールに分解します。
この炭酸ガスによりパンは膨らみ、ビールは泡立ちます。
一方、味噌や醤油で使われる麹菌はタンパク質を分解する酵素(プロテアーゼ)や糖質を分解する酵素(アミラーゼ)が生成した酵素により分解されます。
また、カルピスなどで有名な乳酸菌は、牛乳の乳糖を分解し乳酸を生成します。
以上のように微生物によって分解する栄養素が異なる事はアレルゲン性の変化に大きく関わります。
その為、発酵においてアレルゲン性が変化するかどうかはアレルゲンコンポーネント=タンパク質が分解されるかどうかという点が特に重要になります。
そして、消化の時と同じようにタンパク質が分解される時に、連続性エピトープがアミノ酸配列の途中で分解されたり、構造的エピトープの構造が変化したりする事によって特異的IgE抗体との結合性が減弱して、アレルギー反応が減弱したります。
一方、糖分を分解する発酵では一般的にアレルゲン性が低下しない為、加工品の摂取の際には注意が必要です。
本日は以上となります。
今回で3回に及ぶ、食物アレルゲンの基礎に関する解説はいかがでしたでしょうか?
解説するのが難しい分野ですが、上手にお伝えできているのかとても不安ですが、食物アレルゲンに関して理解が深まる事で、日常生活で応用が効く機会がきっとあるはずです。
難しい専門用語に慣れ親しむ事も踏まえて、時間をおいて基礎編を①〜③まで何度か見返してもらえたら幸いです。
では、また次の記事にて
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