先日のツイートで、適切なタイミングでエピペンを接種された一例を紹介させて頂きました。
定期的なエピペン接種の練習やアナフィラキシーの重症度を普段から意識されていた事が功を奏したのでしょう。
普段、エピペンの処方を受ける場合、3パターンの処方の適応があります。
1.アナフィラキシーを実際に起こした事がある場合
2.アナフィラキシーを起こした事はないが、重症が予測されている場合
3.医師が必要だと判断した場合
1.アナフィラキシーを実際に起こした事がある場合
この場合の処方は言わずもがなかと思います。
特に幼児期に眼の前で症状を呈した際に、怖い思いをされた親御さんは多いのではないでしょうか?
その際に重要な点は、この経験をただ「怖かった」だけで済まさない事だと思います。
「百聞は一見に如かず」
一度でもアナフィラキシーを目にしたら、その経験は鮮明に頭に残ります。
怖い思いをしたという体験を反対側から見ると、どの程度のアレルゲン量を摂取した場合にどのような経過で悪化していくかという経験になります。
そしてこの視点からは、どのタイミングでエピペンを接種すべきなのか、具体的なイメージも可能です。
勿論、誤食しないよう最大限の努力は必要ですが、アナフィラキシーという起こった出来事に対して、視点が違えばマイナスの体験をプラスの経験に変える事ができます。
2. アナフィラキシーを起こした事はないが、重症が予測されている場合
食物アレルギー診療ガイドライン2021では
呼吸器症状、循環器症状の既往
原因抗原の特異的IgE値が強陽性
コントロールできていない気管支喘息の合併
微量で客観的症状が誘発される
と表記されています。
私が思う最もエピペンの指導する際に難しいのがこのパターンです。
というのも、ガイドラインにも示されている下の3例は、アナフィラキシーの経験がないからです。
つまり、お子さんが眼の前でアナフィラキシーを起こした場合、エピペン接種を行うであろう親御さんは、初めて体験したアナフィラキシーに対してエピペン接種を求められるのです。
誤解を恐れずに言い換えると、「エピペン接種するという事」は「我が子に針を刺す(注射する)」という事です。
この事がどれ程、親御さんの勇気を振り絞る必要がある行為かという事は筆舌に尽くしがたいです。
過去にアナフィラキシー症状を認めていた場合は、これ程まで我が子が苦しい思いをするのであれば、エピペン接種(注射)が必要だと頭でも心でも理解でき得るかと思います。
一方、アナフィラキシーを見た事もない親御さんがエピペンを処方された場合、アナフィラキシーについて病院で説明され、エピペン接種の指導を受ける事で、頭ではエピペン接種の必要性を理解できるかもしれません。
ただ、心の底から十分に理解する事は相当難しいのではないかと考えています。
この解決策の一つとして、私が唯一思いつくのは「実際にアナフィラキシーを起こした患者さんやその際にエピペンの接種を行なった親御さんの経験談を聞く事」だと思っています。
同じような境遇(重症度やアレルゲンに関して)のお子さんや親御さんが実際にアナフィラキシーを起こした際にどのような経過を辿り、どのような心境の変化が生じたのか。
一見は容易ではありませんが、方法次第で百聞は可能です。
アナフィラキシーの既往がなくても、エピペンの処方を受けているご家庭ではSNSなどを通じて、経験談を聞いてみても良いかもしれません。
3.医師が必要だと判断した場合
食物アレルギー診療ガイドライン2021では
患者や保護者の希望(十分な指導で適応条件と接種の医師がある場合)
緊急受診する医療機関から遠方に在住
宿泊を伴う旅行 など
と表記されています。
こちらも先程と同じくアナフィラキシー症状の既往がない状態での処方かと思います。
大きく異なる点としては、元々の重症度がアナフィラキシーを起こす程高くない点だと思います。
ニュアンスとしては、アナフィラキシーに対するリスクは必ずしも高くないけれども、万が一重症の症状を呈した場合に備えてエピペンを所持していたいといった感じでしょう。
時折、外来で「お守り代わりに」と言って処方をご希望される方がいらっしゃいます。
お守りは持っているだけで効果があるかもしれませんが、エピペンは実際に使えなければ効果を発揮しません。
実際に患者や保護者の希望には注意書きとして「ただし、使用する適応条件を十分に理解して、緊急時に自ら(保護者が)使用する意思がある事を確認した上で処方すること」とガイドラインにも記載されています。
そのエピペンは本当に必要なものなのか、じっくり主治医の先生と相談した上で処方を受けて頂ければ幸いです。
本日は以上となります。
また次の記事にてお会いしましょう。
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