ここ一年で牛乳アレルギー発症予防について、分かってきた事があります。
- 生後1ヶ月から3ヶ月まで普通粉ミルク10ml以上摂取しておくと、生後6ヶ月時点で牛乳アレルギーの発症が抑えられる(牛乳アレルギー発症率;摂取群0.8% vs 除去群6.8%)
- 生後3日間で普通粉ミルクを摂取した場合とアレルギー対応ミルク(アミノ酸乳)を摂取していた場合では、粉ミルク摂取群で牛乳アレルギーを多く発症していた(牛乳アレルギー発症率;摂取群13.2% vs 除去群2.6%)
1. ⇨元の論文(SPADE study)
(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0091674920312252?via%3Dihub)
⇨ほむほむ先生のとっても分かりやすい説明
(https://pediatric-allergy.com/2020/03/10/milk-sensitization/)
2. ⇨元の論文(ABC study)
(https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2753281)
⇨ほむほむ先生のとっても分かりやすい説明
(https://pediatric-allergy.com/2020/03/10/milk-sensitization/)
どちらも、普通粉ミルクの早期摂取に関する論文ですが、結果は相反するものでした。
この2編から、早期過ぎる粉ミルク摂取は牛乳アレルギー発症を促進し、1ヶ月頃からの少量摂取は牛乳アレルギーを予防する可能性があると言えるかと思います。
ですが、今回の日本アレルギー学会学術大会にて、1)の先生達のグループが、粉ミルクの中止時期と牛乳アレルギー発症に関係がある可能性について報告されていました。
(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34403836/)
彼らの検討では、元のSPADE研究に参加して患者さん達を
a)生後1ヶ月未満で中止した症例
b)生後1-2ヶ月の間に中止した症例
c)生後3-5ヶ月の間に中止した症例
d)6ヶ月まで粉ミルク摂取を継続した症例
の4群に分けて、それぞれのグループが牛乳アレルギー発症にどう影響したかを検討していました。
その結果ですが、
a)41.2%
b)11.5%
c)10.1%
d)0.6%
と、普通ミルク摂取開始後、早期に摂取を中止した群が最も牛乳アレルギーを発症していました。
また、生後1ヶ月未満で普通粉ミルクを中止した場合は生後6ヶ月まで普通粉ミルクを摂取していた場合より牛乳アレルギー発症の相対的リスクが約65倍になるとの結果でした。
今回の検討は元々の研究(SPADE study)の副次的な検討の為、本格的な介入研究を行なった場合は異なる結果が得られる可能性がありますが、それでもとても有用な検討だと思います。
以上の結果から牛乳アレルギーを予防するためには
1.生後3日以内は粉ミルクの除去が望ましい
2.もし生後3日以内に粉ミルク摂取した場合は、少なくとも生後1-3ヶ月間は少量(粉ミルク10ml程度)の摂取を継続した方が良い
3.可能なら、生後6ヶ月まで粉ミルクの摂取を継続した方が良い
といったところでしょうか。
これらの牛乳アレルギー予防が上手くいくかは、小児科だけでなく産婦人科(特に小児科不在の産院)の先生方もご存知かどうかに大きく影響するかと思います。
最後に、これらの普通ミルク摂取は母乳栄養の有用性を否定するものではない事を論文中にも述べられている点を追記いたします。
ダイナミックに変わる牛乳アレルギー予防研究、引き続き注視し、情報を発信していけると幸いです。
ではまた次の記事にて
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