前回の日本アレルギー学会学術大会にて、即時型食物アレルギーの原因食物がこれまで3番目に多かった小麦アレルギーからナッツアレルギー(ピーナッツは含んでいない)に置き換わっている事が報告されました。
そのナッツアレルギーの中でも先日誤食の報道がなされていたクルミがピーナッツよりも多く、かつ急に増えていました。(https://news.yahoo.co.jp/articles/8f43d60d705e8f5847bb55cae6ea5a61285a1b07)
クルミアレルギーの急激な増加に関する理由は不明ですが、ナッツ類の消費量増加も影響している可能性があると言われています。
以下に考えかたや、今後の対策について述べたいと思います。
1 .2歳を近くになったらナッツ類の採血を行う
基本的にナッツ類を安全に食べる事が出来る年齢は3歳以降となっています。
これは、アレルゲンとしてではなく、食品として誤嚥・誤飲しにくくなると言う意味です。
その為、アレルギーが全くないお子さんでも、ナッツそのものを歯が生えそろわない時期に食べたり、噛む力(咀嚼力)が弱いうちから食べたりすることは一般的に推奨されません。
また、0歳や1歳直後のアレルギー採血では、ナッツ類以外に日常的に摂取する未摂取食材の評価が優先されるので、個人的には1歳半あたりの採血からナッツ類を含めて良いと考えています。
一方、東海地方では五平餅(クルミ入り)など、千葉(落花生の産地)など地域によって、ナッツと食事の関係が異なります。
この辺りは、どのタイミングでどのナッツの採血を行うか、主治医の先生と要相談だと思います。
2. 採血で陽性になった食材は積極的に負荷試験を行う
先日ツイートにも記しましたが、日本は負荷試験先進国です。
(https://twitter.com/z70588259/status/1450779285770276879)
専門医の偏在によるアプローチのしやすさの問題はありますが、それでも海外と比較して負荷試験が全くできないという地域は多くありません。
ナッツなんて除去しておけばいいじゃない?という声も聞こえてくるかもしれませんが、私はそうは思いません。
災害時の配給食にナッツが含まれていたら?成人して海外赴任が決まったけど、食べ物の中に混ざっていたら?など色んな状況が考えられます。
3. ナッツアレルギーについて知識をつける
「知る」という事は、時に不安や恐怖を伴いますが、備える事で自分自身の最強の武器にもなりえます。
例えば、「ナッツ」というと、一般的な理解では「木の実」だと思います。
ですが、前回の調査までナッツアレルギーにおいて最重要視されていたピーナッツは本当に「木の実」でしょうか?
ピーナッツ=落花生の実なので、「木」ではなく地面の下に実る種子です。
同じ種子ですが、「地面の上」に生るナッツと、「地面の下」に生るナッツは本当に同じように怖がるべきなのでしょうか?
例えば、特異的IgE抗体価(以下sIgE)について、ピーナッツとクルミの相関係数は0.04、ピーナッツとカシューナッツは0.20と弱い相関関係しか認めなかったというような海外からの報告もあります。
(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18502490/)
基本的に一つのナッツアレルギーがあったとしても、他のナッツまで全て除去する必要はありません。
一つ一つのナッツを負荷試験で正しく評価し、適切な除去に努めたら良いのです。
一方、ナッツ類は植物学的分類によって構成タンパク質が似ることも知られています。
マメ科:ピーナッツ-大豆(sIgE相関係数:no data)
クルミ科:クルミ-ペカンナッツ(sIgE相関係数:0.96)
ウルシ科:カシューナッツ-ピスタチオ(sIgE相関係数:0.95)
と、分類が同じ場合、強い相関を認めています。
私たちも、クルミアレルギーの場合はペカンナッツを、カシューナッツアレルギーの場合はピスタチオも除去し、必要に応じて負荷試験を行うように指導しています。
このように正しく知識を身につける事で、正しくアレルゲンを怖がる事が可能です。
繰り返しになりますが、「知る」という事は最大の武器になります。
これからも一緒に勉強していきましょう。
ではまた次の記事にて
コメント