私が患者さんへ負荷試験を勧める理由

食物アレルギー

先日ツイートさせて頂いた内容について、情報を追加したくて今回このテーマを取り上げました。

それは、先日関東で起こった地震の翌日にツイートしたもので、

以下のツイートになります。

日本は地震や台風などの自然災害が多いです。

一過性で侵襲が弱いものであれば、災害後すぐに日常に戻る事が可能です。

一方、強烈な災害が起こった場合、避難所での生活を余儀なくされ、日常を取り戻すのに時間がかかる可能性が大いにあります。

食物アレルギーを持つお子さんにとって、特に災害初期に問題になるのが食料です。

災害発生後の数日間は現場がとても混乱しており、食べる物が不足します。

そんな余裕がない状況で、周りの人達が食物アレルギーに配慮してくれるのを期待出来ない場合があります。

勿論、自宅で災害用の食料を準備しておくのは最低限必要です。

ですが、災害に規模によってはいざという時の備蓄だけでは足りなくなる可能性もありえます。

そのような場合、食べるものは配給される物に依存するしかありません。

最近は、食物アレルギーに配慮した備蓄を推進している自治体も増えてきているようです。

ですが、混乱している現場で食料が適切に配給されないのは、十分に想定される事態です。

ですが、災害は我々の意思と関係なく、ある日突然やってくるのです。

そんな日が来ないに越した事はありませんが、もしその日がやって来たとしたら、気づいた時から準備しても遅いのです。

少し視点は異なりますが、

「日々鍛錬し、いつ来るとも分からぬ機会に備えよ!」

という、私の好きなドラマの言葉です。

この機会というのは、物語の上ではチャンスの意味ですが、裏を返すと「思わしくない出来事に出会った時の為に、身を守る準備をせよ!」とも捉える事が出来ます。

そして、私が最もお伝えしたい点は、「食物アレルギーについて定期的にどの程度アレルゲンを摂取する事ができるのか評価しておく事が望ましい」です。

ツイッターにも記しましたが、

  • 災害発生後、丸一日何も食べる事が出来なかった
    • 卵アレルギーがあるお子さんの目の前に、卵を使ったあんパンしかない時

といったような状況が発生したと想定します。

また、次に食べ物の配給があるのがいつになるかわからないような場合、果たして我が子にそのあんパンを与えても良いのかどうか?

このような究極的な場面で、「食べる」のか「食べない」のかどちらかを選択せねばなりません。

そんな時、日頃から何をどの程度把握していると、1の場合も2の場合も迷いを減らす事が出来ます。

例えば、1の場合で鶏卵アレルギーの重症度で分けると

軽症:全卵5グラム程度は摂取可能で、パンに卵を使用しているレベルだと食べる事ができる

➡️災害時のあんパンも「食べれる」

中等症:全卵1gで軽度のアレルギー症状が出る。スナックパンなど微量の鶏卵を含んだパンなら食べた事がある

➡️災害時のあんパンは、特に照りが付いている部分は避けつつ、パン数口+あんこは「食べれる」もしくは、症状が出たとしても軽い症状で落ち着く

重症:全卵1g未満でアナフィラキシーが出る。

➡️基本的に「食べない」、もしくはパンのコンタミを想定しつつあんこだけを取り出して「食べる」

と、このようにアレルギー症状が出る可能性と、飢えを凌ぐ上で食べる事の必要性を天秤にかけながらも、対処が可能です。

震災で医薬品も乏しい状況である事も考慮すると、いざという時にアナフィラキシーを起こす可能性を孕みながら一か八かの摂取は、正に生死をかけた選択となりえます。

勿論、このような状況に一生縁が無い方もいらっしゃるでしょうし、明日もしくは数年の間にこのような事態になるかもしれません。

未来を予測出来ない以上、私としては少しでも多くの方にアレルゲンがどの程度摂取出来るか分かっていて欲しいし、感作を認めた食材があるならば、その食材が食べれるかどうか知っていていて欲しいのです。

数多くの食物アレルギーの患者さんを診させて頂いていると、一定の割合で負荷試験やアレルゲン摂取が怖くて、中々摂取が進まないご家族がいらっしゃいます。

そのようなご家庭では、以前にお子さんがアナフィラキシーレベルの強い症状を呈し、とても怖い思いをしたご経験がおありの場合や、症状の強さと関係なく元々ご家族の不安が強い場合などがあります。

本人やご家族の不安が強い中、無理にアレルゲンを摂取しなさい!などとお伝えしたいわけではありませんが、人生における「まさか」がいつ来ても良いように準備を進めていて欲しいと先日の負荷試験でもお伝えした次第です。

ですが、特に思春期になり自分で考える事が出来るようになった食物アレルギーお子さんは、先日のブログでお示ししたように、ご自身やご家族と考えた上で微量のアレルゲンを摂取する意義は大きいのかもしれません。

以上、参考になれば幸いです。

ではまた次の記事にてお会いしましょう。

最終更新

2022/4/4

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