食物アレルギー診療において、採血や(皮膚検査)プリックテストは欠かす事が出来ない検査の一つです。
最近、食物アレルギーを心配し離乳食を開始する前にアレルギー検査をご希望される方を時折見受けます。
ですが、離乳食前の採血検査は一般的に推奨されてるわけではありません。
理由は、
①乳児期における食物アレルギーの有病率は5〜10%とされているから
これは裏を返すと、90%近い患者さんにとっては不要な検査である事を示唆しています。
②保険診療が成り立たない
保険診療における検査は、基本的に疑わしい症状を認める場合に限ります。
その為、症状がないにも関わらず、検査をする場合は人間ドッグのように自費診療となります。
保険診療は、健康な身体の方に検査を行う事を想定していません。
その為、発症していない疾患を(例;小児期のアレルギーや老年期の癌など)を予防的に保険診療内で検査する事はできません。
(厚生労働省、Ⅳ. 保険医療機関及び保険医療養担当規則について、https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/dl/shidou_kansa_01.pdf)
極端な例を挙げると、「何も症状はありませんが、うちの赤ちゃんが癌があるか心配なんで、(小児でほぼ発症しないであろう)癌の検査、全部保険診療でやっときました!」というのはまかり通らないといった感じです。
その為、現実には外来で医師と相談して、離乳食開始前にアレルギー検査を行っている方もいらっしゃるかもしれませんが、厳密にはややグレーな診療になります。
しかし、近年「二重抗原曝露仮説」により、乳児期の湿疹が食物アレルギーに影響する事は徐々に世間に浸透しています。
では乳児湿疹を認めた場合に離乳食前に採血検査を行っても良いか?というと、これも一概に推奨されているわけではありません。
食物アレルギー診療ガイドライン2016では第6章「診断と検査」でアレルギーの採血で評価すると明記しているのは以下の2つの場合です。
- 症状(湿疹)が出現し、適切なスキンケアや治療でも症状が変わらない場合
- 即時型アレルギー症状を認めた場合
では、乳児湿疹を認めた場合、どんどん離乳食を進めて良いか?という疑問については、(鶏卵に関してだけですが)小児アレルギー学会より提言がなされています。
(https://www.jspaci.jp/uploads/2017/06/teigen20170616.pdf)
そこには、湿疹を鶏卵摂取開始までに寛解させ、生後6ヶ月から鶏卵の微量摂取を進めるように推奨するとしています。
つまり、乳児湿疹を有する児がアレルギー検査で感作を認めるかどうかに関して、臨床的な意義は大きいものの、通常の治療で湿疹が改善した場合、検査の対象にはならないということになります。
この辺りは、今後の研究により乳児湿疹を有する児をどのように診ていくのが、アレルギーの「発症予防や遷延予防」に寄与するのか、検討が必要なところかと思います。
少しモヤモヤした内容になりましたが、このモヤモヤを解消できるよう私自身、臨床研究を続けていきたいと思います。
ではまた次の記事にて
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