食物アレルギーにおける耐性獲得までの時間の重要性とは?

食物アレルギー

皆様

大変ご無沙汰しております。

ここ数ヶ月、新型コロナ感染症の煽りを受けすっかりブログのアップが滞っておりました…

本来なら論文を読み込んで記事にするのですが、コロナ禍という事で、今回は私が日々の診療で気になっている事について記事にしたいと思います。

・食物アレルギー発覚後から耐性獲得は出来るだけ早期に確認できた方が良い?

食物アレルギー診療の大前提として、特に鶏卵・牛乳・小麦における本邦の耐性獲得率は比較的高いとされています。

一方で、いつ耐性獲得したかを正確に把握できる人はいません。

「いやいや、我が子は20○○年○月○日に耐性獲得していると主治医に言われたので、幼稚園や小学校でも全く気にせずに過ごしていますよ」と仰る方もいらっしゃるかもしれません。

確かに主治医より耐性獲得(食物アレルギーからの卒業)を言い渡された日は、「耐性獲得した」と認識した日かもしれませんが、それは必要十分な量のアレルゲンを摂取可能であると医師が認定した日であり、身体的にはそれよりも前に耐性獲得しているはずです。

その身体的な耐性獲得した日(必要十分な量のアレルゲンを摂取可能になったその日)は医師に認定される一日前だったかもしれませんし、半年もしくは一年以上前だったかもしれません。

というのも、ある一定量(例えば鶏卵1個)を摂取可能になった日を真の意味で正確に把握しようとするならば、前日までは鶏卵1個食べて症状を認めたけれども、今日から鶏卵1個食べても全く症状を認めず、かつ明日以降もその状態が続く事を確認する必要があるからです。

まるで屁理屈のように聞こえるかもしれませんが、真の意味で身体的な耐性獲得の日を定義するなら上述した日であるはずです。

逆から見た場合の例を挙げると、

生後8ヶ月に卵雑炊を与えて全身蕁麻疹を認め、採血で鶏卵の数値が上昇していたので、鶏卵の除去を開始

1歳の採血で鶏卵の抗体値が低下しており、総負荷量を少量に設定した負荷試験が陰性である事を確認した

2歳の採血で、更に鶏卵の抗体値が低下しており、総負荷量を中等量に設定した負荷試験が陰性である事を確認した

3歳の採血で、更に鶏卵の抗体値が低下しており、総負荷量を日常摂取量に設定した負荷試験が陰性である事を確認した

この場合、この子が耐性獲得した事を確認できたのは3歳の時ですが、身体的に耐性獲得したは果たしていつだったのでしょうか?

答えは「誰にも解らない」になります。

なぜなら、実は1歳の時点で日常摂取量の負荷試験を行えば、陰性を確認できた可能性があるからです。

では、何故1歳の時に確認できた可能性があった耐性獲得を3歳まで延ばしているかというと、現在のガイドラインが安全性を重視したものになっている為です。

特に鶏卵においては食物アレルギー診療ガイドライン2012の基で負荷試験を行なっていた頃は、現在のの日常摂取量から行うのが一般的でした。

そして、食物アレルギーの重症度が現在と同じようなレベルで意識されていなかった当時は、負荷試験でアナフィラキシーを起こす事は日常茶飯事でした。

きっと昔の負荷試験をご存知である親御さん達からすると、今の負荷試験がどれだけ安全性に気を配られているか驚かれるかもしれません。

つまり、早期の耐性獲得確認(=多い量のアレルゲン摂取)は食物アレルギーにおける安全性とトレードオフ(何かを得ると、別の何かを失う、相容れない関係性のこと)の関係にあると言えます。

故に、最初の質問に対する私の個人的な見解としては「安全性を重視する為、早期に耐性獲得の確認する必要はない」と考えています。

寧ろ患者さん一人一人の食の進み具合や、各ご家庭の状況(共働きであったり、他の兄弟の発育など)に合わせて、小学校に入るくらいまでに耐性獲得できていれば良いかなぁという考えです。

勿論、悪戯にゆっくり耐性獲得の確認を行う訳ではなく、アレルゲンの摂取状況や抗体値から得られる予測を元に、可能であればもっと早期に耐性獲得の獲得を行う事もあります。

実際に軽症の鶏卵アレルギーのお子さんであれば、1-2歳の頃に私の外来を卒業していく場合がほとんどです。

そして、比較的重症であっても6歳までには耐性獲得できるように持っていくというのが個人的な目標です。

但し、完全除去を指示せざるを得ない、最重症のお子さんがいらっしゃる事は理解しておかなければなりません。

食物アレルギーのお子さん達にとって、より良い診療を行う為にはどのように考えるのが良いか…

一朝一夕で答えが出るものではありませんが、現状における私の考え方としては以上となります。

それではまた次の記事にてお会いしましょう。

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