定期的なアレルゲン摂取は「必ず」採血の数値を改善させる?

食物アレルギー

食物アレルギーからの卒業(耐性獲得)する為には、出来るだけアレルゲンを食べましょう!

と言うのが、食物アレルギーにおけるここ数年のトレンドだと認識しています。

実際に負荷試験などで食べる事が出来るアレルゲンの量が分ければ、定期的に食べていくように指導を受ける事が多いかと思います。

その後、外来で食物アレルギーが良くなっているかどうかの指標として、しばしばアレルギーの採血結果が用いられます。

アレルギー採血の数値の変化は見た目で分かりやすいので、患者さんからの理解も得やすい印象です。

ただ、その結果の判定には注意が必要な場合があります。

例えば小麦アレルギーでうどん摂取中における採血結果(小麦やω-5グリアジン)を例に挙げると

  1. 数値が低下⇨良くなっていそう
  2. 数値が高いままor上昇⇨悪化した?

1の場合だと経過が良く、そのままうどんの摂取を継続してよさそうですが、2の場合だとうどんを摂取した為に数値が上昇してしまい、うどんの摂取を中断すべきなのでしょうか?

私の見解としては、以下の3つです。

  1. うどん摂取が数値の上昇に影響した:単純にアレルギーが悪化した場合
  2. うどん摂取から採血までの期間が短かった:今後数値は低下のトレンドが見込まれるが、一時的に数値が上昇して見えた場合
  3. 総IgE値が上昇トレンドだった:見かけ上、数値が上昇していた場合

一つづつ解説して行きますね。

①単純にアレルギーが悪化した場合

一般的にはアレルゲンの摂取が食物アレルギーを改善させる方に向かわせる事が多いのです。

一方で、アレルゲンの摂取が食物アレルギーを悪化させる可能性がないかどうかについてはまだ分かっていないこともあり、絶対にあり得ないとは言い切れません。

②タイミングによる問題の場合

外来で一番多いのはこれです。

アレルギーで採血する時に測っている「IgE抗体」は、体内のアレルギー環境(体質)から生み出している製品(最終産物)といったイメージです。

例えば、IgE産生工場というものがあったと仮定します。

この工場で製造工程の途中にアレルゲン摂取という工程が加わると、製造工程に変化が起きます。

ただし、製造工場で何年もかけて作り上げたIgE産生工程を、ほんの数カ月で全て変更することは難しかったりします。

時と場合によりますが、製造工程の変化には半年や数年単位の時間が必要になることもあります。

その為、この製造工程の変化する途中の状態だと、一時的に「IgE値」が上昇して見える事があります。

③総IgE値(非特異的IgE値)の影響

非専門医の先生からはあまり評価が高くない印象の総IgE値ですが、個人的にはかなり注視しています。

むしろ、この数値がないと卵白や小麦などの採血結果も正確な評価が難しくなるとすら感じています。

この総IgE値は卵白や牛乳、小麦やダニなどの全ての数値を足したような数値イメージしてもらうと良いかもしれません(正確には特異的IgEの総和ではないのですが、イメージしやすいように敢えてざっくりと説明しています)。

また、総IgE値は年代によって基準値が異なっている事が知られています。

(http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/36.html)

そして、食物アレルギーだけでなく、喘息やアトピー性皮膚炎の患者さんの総IgE値は、年齢と共に高い数値のままさらに上昇する事があります。

以下のように、食物アレルギーとアトピー性皮膚炎を持つお子さんの1歳から2歳の経過を例に挙げると

1歳時⇨総IgE:100 IU/ml、卵白:5 UA/ml

2歳時⇨総IgE:500 IU/ml、卵白:25 UA/ml

上記のように、総IgEと卵白が同じ時期に上昇する事があります。

総IgEと卵白の数値を極端な例として5倍にしていますが、実際にはもっと色々なパターンがあります。

ただ、このように総IgE値と一緒に卵白などの特異的IgE値が動く場合、以下のように更に詳しくパターンを分ける事ができます。

  1. 2歳時⇨総IgE:500 IU/ml、卵白:25 UA/ml
  2. 2歳時⇨総IgE:500 IU/ml、卵白:10 UA/ml

このように1歳から2歳にかけて総IgE値が上昇トレンドの場合、卵白の数値の上昇が総IgE値と比較して緩やか場合は、食物アレルギーが良くなっているサインである可能性があります。

今回の内容は、必ずしも学術的に証明されている訳ではなく個人的な意見を多分に含みます。

ただ、上記の説明で臨床的には大きく的を外した経験はなく、このように採血の数値が推移した患者さんも順調に卒業(耐性獲得)できていると感じています。

食物アレルギー採血の解釈は難易度が高く、専門家でも意見が分かれるところですので、私自身引き続き研究・検討を続けたいと思います。

今日は長くなってしまいましたが、また次の記事にてお会いできれば幸いです。

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