自宅で鶏卵を摂取する時どれくらいの量を食べたらいいの?

食物アレルギー

日本の食物アレルギー診療ガイドラインでは、原則の一つとして正しい診断に基づいた「必要最小限の原因食物の除去」が重要であるとの方針を打ち立てています。

元々は栄養素や生活の質を落とさないような意味合いが強かったのだと理解していますが、近年では免疫学的な意味合いにも影響しているのではないかとの印象です。

その一つとして、鶏卵では乳幼児期の完全除去が鶏卵アレルギーの遷延に関係する可能性について報告されています。

(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspaci/35/2/35_135/_article/-char/ja)

そうすると気になるのは、一体どの程度の鶏卵を摂取していれば我が子は鶏卵アレルギーが遷延する事なく卒業(耐性獲得)できるのだろうか?

という点だと思います。

ただ、この点に関する研究はまだまだ発展途上の為、正確な解答は存在していません。

ですが、本日は免疫療法に関する論文などを参考に予測(類推)を含みながら考えていきたいと思います。

鶏卵摂取を進める場合、自宅摂取する候補としては

1.ゆで卵白:少量(1-2g)程度

2.ゆで卵白:微量(0.2g)程度

3.ゆで卵黄:数g〜1個

4.加工品

この辺りが、挙がるかと思います。

一般病院におけるアレルギー診療での印象としては、1のゆで卵白少量摂取が可能であるお子さんは、年単位の時間をかければゆっくりと耐性獲得する可能性は十分あり得ます。

卵白やオボムコイドの数値にも依ますが、定期的に摂取されているご家庭では徐々に改善する印象です。

食物アレルギーで有名な相模原病院における免疫療法の報告ですが、全卵の1/32個(ゆで卵白だと約1g前後)の摂取を継続する事で、開始後1年で33%近い患者さんが鶏卵1/2個摂取が可能になったと報告しています。

(https://www.karger.com/Article/Fulltext/454807)

次に2の微量の卵白摂取についてです。

以前、私たちの病院では元々幼児期から微量(ゆで卵白)摂取を鶏卵アレルギーのあるご家族に勧める事はありませんでした。

むしろ、少量の鶏卵を摂取ができないお子さんでは、卵黄の摂取を継続するか、完全除去の方針を指導していました。

ですが、成育医療センターより発表された鶏卵アレルギー予防研究(PETIT study)により、微量(ゆで卵白0.2g相当)でも、体内の免疫の状態に変化を起こすことができる(耐性獲得に進める)のではないか?というように考えが変化しました。

私達の病院でもここ数年から試みているところなので、ご報告できるほどの情報はまだ持ち合わせていません。

ただ、個人的な印象としては、この微量摂取であっても継続的に摂取していらっしゃるご家庭では少しずつ成果が出ていている感じがします。

そして、一番難しいのは3の卵黄です。

卵黄そのものは即時型アレルギーのアレルゲンと見なされておりません。

その為、卵黄の摂取が鶏卵アレルギー卒業(耐性獲得)に影響を与える可能性は低いと考えられます。

ですが、ゆで卵黄では卵白と接触部分に多少なりとも卵白成分が移る為、全く卵白摂取していないわけでもありません。

その卵白成分が果たしてどの程度、免疫的な変化(耐性獲得)に影響を与える事が出来るのかについて、全く予測できないというのが私の正直な意見です。

そして、私が卵黄摂取について患者さんご家族へお話する時には最も気にしている事は、ゆで卵黄を作る事はとても手間のかかる作業であるという事です。

お忙しい生活の中で、ゆで卵を定期的に作り、そしてお子さんに食べさせる事がどれ程大変であるのか、私自身子育て、自宅での料理をする間に痛感しています。

その為、卵黄を食べさせていれば、鶏卵アレルギーが良くなる(耐性獲得に効果がある)という点に明確な根拠があれば、どんなに手間がかかろうとも卵黄摂取をオススメするのですが、現時点では摂取しないよりしていた方が良いかもとしかお伝えできていません。

最後に4の加工品についてです。

ひとえに加工品と言っても、ほぼアレルゲンを含まないものから加熱されていない鶏卵加工品まで様々です。

その為、一概に耐性獲得に効果があるともないとも言えません。

ですが、個人的な見解としては、少量(数g)程度の鶏卵を含む加工品は、鶏卵アレルギーの耐性獲得に影響がある印象を持っています。

私が診させて頂いている患者さん(1歳未満から)で、卵白・オボムコイドともclass5まで上昇していましたが、1-2年に及ぶスナックパン摂取を継続し、4歳で私の外来を卒業されました。

スナックパンの摂取は関係なく、たまたま運が良く耐性獲得した可能性も十分ありますが、同様に鶏卵の数値が変化したお子さんで4歳時に耐性獲得する症例は決して多くありません。

また、鶏卵の加工品は小麦と一緒に加工・加熱するとアレルゲン性が低下する事もよく知られています。

こちらは私が尊敬するほむほむ先生のブログにわかりやすくまとまっておりますので、ご参考にされて下さい。

(https://pediatric-allergy.com/2021/01/13/antigenic-activities/2/)

また、卵黄と比較して加工品は準備が容易である為、個人的には摂取可能である加工品の日常的な摂取を患者さんへお勧めしています。

以上、自宅で摂取するゆで卵白を摂取する時どれくらいの量を食べたらいいの?

に対する私の解答(印象多め)は

1.ゆで卵白:少量(1-2g)程度→オススメ

2.ゆで卵白:微量(0.2g)程度→多分効果ありそう

3.ゆで卵黄:数g〜1個→うーん

4.加工品→ものによるけど、オススメ

となります。

これらの情報が皆様のお役にたてば幸いです!

ではまた、次の記事にて

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