変わりゆく食物アレルギー診療について行こう!〜その①〜

食物アレルギー

先日アナフィラキシーの診断基準が変更されている事について記事を書きました。

(https://pediatric-allergy.net/anaphylaxis/)

本日は食物アレルギー診療の手引き2020(https://www.foodallergy.jp/care-guide2020/)で変更された、負荷試験の実施施設と役割について解説したいと思います。

1.負荷試験実施施設を専門性や救急の対応度合いで3つに分類した

2.各医療施設で実施可能な負荷試験を定義した(推奨)

順を追って説明したいと思います。

1.負荷試験実施施設を専門性や救急の対応度合いで3つに分類した点について

それぞれ

①一般の医療機関

専門性:食物アレルギー診療を行っているが、負荷試験の経験は豊富でない医療機関

救急対応度:救急対応が可能であり、必要時にはアドレナリン(ボスミン)の筋肉注射が可能

②日常的に実施している医療機関

専門性:負荷試験の経験豊富な医師が在籍する医療機関

救急対応度:予期せぬ重篤な誘発症状に対応できる

③専門の医療機関

専門性:中心拠点病院及び負荷試験豊富な医師が複数在籍する医療機関

救急対応度:予期せぬ重篤な誘発症状に対応し、入院治療ができる

と、医療機関が3つに分類されました。

中心拠点病院を除いて、具体的にどの病院がどの分類に当たるかなどは、現時点では不明です。

ですが、今後この分類に従って食物アレルギー診療が進んで行くものと思われます。

皆様の通院されている病院はどこに当てはまるか、イメージできましたでしょうか?

2.各医療施設で実施可能な負荷試験を定義した(推奨)点について

これまで、食物アレルギーを有する患者さんが負荷試験できる施設は特に制限が設けられていませんでした。

今回の手引きでは各施設に応じた重症度の負荷試験を行うように推奨されています。

①一般の医療機関

重篤な誘発症状のリスクが低い負荷試験(少なくともアナフィラキシーの既往がない症例)

②日常的に実施している医療機関

鶏卵以外のアナフィラキシー既往症例を除いた、食物アレルギー患者に対する負荷試験

(つまり、鶏卵だけアナフィラキシーの既往があっても負荷試験OK)

③専門の医療機関

全ての重症度の食物アレルギー患者に対する負荷試験

と、各医療機関の対応可能な重症度の負荷試験を行うように推奨されています。

特に①の一般の医療機関では、推奨される負荷試験がアレルゲン特異的抗体値の数値を用いて定義されています。

  • 鶏卵:オボムコイドsIgE class2以下
  • 牛乳:ミルクsIgE class2以下
  • 小麦:小麦sIgE class1以下かつω5グリアジンclass0
  • ピーナッツ:ピーナッツ class1以下かつAra h 2 陰性

等、細かく分類され、より安全に配慮し、適切な負荷試験を適切な施設で行うように配慮されていると感じました。

一方、アレルギー専門医の偏在は今も尚、アレルギー診療の問題として残されたままです。

その為、この負荷試験施設分類が今すぐに全ての地域で適用されるわけではないと考えています。

ですが、この負荷試験実施施設の分類と役割が上手に機能すれば、食物アレルギーを持つお子さん、親御さん、医療者と食物アレルギーに関わる全ての人にとって「良し」と思える負荷試験が実施できるかもしれません

恐らく今年改訂される食物アレルギー診療ガイドライン2021にも同様の記載がなされているかと思います。

ここ数年食物アレルギーは黎明期を迎えています。

どんどんと新しい情報が出てきますので、私もその都度情報を発信できれば幸いです。

ではまた次の記事にて

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