変わりゆく食物アレルギー診療について行こう!〜その②〜

食物アレルギー

前回、「変わりゆく食物アレルギー診療について行こう!〜その①〜」と銘打って、負荷試験の施設基準(推奨)について解説しました。

本日は、負荷試験における総負荷量と推奨施設を踏まえて、解説したいと思います。

参照:食物アレルギー診療の手引き2020

先ず、負荷試験に置ける総負荷量は少量・中等量・日常摂取量の3つに分けられており、段階的に負荷試験を進めていきます

実際の負荷量はこちらをご参照ください。

(食物アレルギーのゴール〜目指すべきアレルゲンの量は?〜)

総負荷量:少量

A.アレルゲンを完全除去している場合

1.一般の医療機関:基本的に少量まで

2.日常的に負荷試験を実施している医療機関

  鶏卵:即時型アレルギーの症状誘発の既往あり

     即時型アレルギーの症状誘発の既往なし+オボムコイドsIgE(class3以上)

  牛乳:即時型アレルギーの症状誘発の既往あり+アナフィラキシーの既往なし

     即時型アレルギーの症状誘発の既往なし+牛乳sIgE(class3以上)

  小麦:即時型アレルギーの症状誘発の既往あり+アナフィラキシーの既往なし

     即時型アレルギーの症状誘発の既往なし+小麦sIgE(class2以上)

     即時型アレルギーの症状誘発の既往なし+小麦sIgE(class1以下)

                        +ω5-グリアジンsIgE(class1以上)

  ナッツ類:基本的に少量まで

総負荷量:中等量

A.アレルゲンを完全除去している場合

 1.一般の医療機関:基本的に少量まで

 2.日常的に負荷試験を実施している医療機関

  鶏卵:即時型アレルギーの症状誘発の既往なし+オボムコイドsIgE(class2以下)

  牛乳:即時型アレルギーの症状誘発の既往なし+牛乳sIgE(class2以下)

  小麦:即時型アレルギーの症状誘発の既往がなし+小麦sIgE(class1以下)

                        +ω5-グリアジンsIgE(class0)

B.アレルゲンの少量摂取が可能な場合

 1.一般の医療機関:基本的に少量まで

 2.日常的に負荷試験を実施している医療機関

  アナフィラキシーの既往、症状誘発の既往、抗体価関係なし

総負荷量:日常摂取量

A.アレルゲンの中等量摂取が可能な場合

 1.一般の医療機関:基本的に少量まで

 2.日常的に負荷試験を実施している医療機関

  アナフィラキシーの既往、症状誘発の既往、抗体価関係なし

尚、鶏卵以外でアレルゲンの完全除去+アナフィラキシーの既往ありの場合は専門の医療機関への紹介を検討となっています。

このように細かく総負荷量を分けるのには理由があります。

大まかに纏めると、

A.アレルゲンの完全除去➡️軽症ではない可能性がある

  誘発歴あり➡️アナフィラキシーでなければ、少量のアレルゲン摂取が可能かもしれない

  未摂取除去➡️アレルギーではないか可能性から重症の可能性まであり、予測がつかない

       ➡️抗体価が低いなら、軽症〜アレルギーではない可能性あり

B.少量のアレルゲン除去が可能➡️軽症の可能性あり

として、完全除去かどうか、過去に誘発症状があったかどうか、その際にアナフィラキシーを起こしていなかったかどうか、アレルギー採血結果がどれくらいかで、負荷試験の総負荷量と推奨施設を決めています。

また、これらの基準を設ける事で

一般の医療機関:非アレルギー症例〜軽症の症例を担当

日常的に負荷試験を実施している医療機関:軽症の除去解除や中等症を担当

専門の医療機関:重症を担当

に分けて、適切に医療資源(医療者や負荷試験枠)を配分し、本当に必要な患者さんに必要な医療が届くように熟慮された末に出された手引きだと思います。

勿論、地域によって専門の医療施設がなかったり、遠方であったりして、一概に言えないと思います

ただ、アレルギー会のトップがこのように方針を打ち出してくれる事で、ゆくゆくは大きな流れが出来てくるはずです。

私は地方でアレルギー診療を行っている身ですが、中央からの流れを注視し、流れに身を任せつつ、自分の立ち位置から適切な医療を提供できれば幸いです。

では、また次の記事にて

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