前回の食物アレルゲンについて学ぼう〜基礎編①〜にて、食物アレルゲンの構造と名前、それぞれの特徴について学びました。
軽く復習すると
食物アレルゲン=アレルゲン性を持つタンパク質
エピトープ:アレルゲン性の根拠となるアミノ酸配列、特異的IgEと結合(例:葉っぱ)
コンポーネント:エピトープを含むアミノ酸の集合体から成るタンパク質(例:木)
食べ物:アレルゲンコンポーネントを含み、タンパク質、炭水化物、脂質からなる(例:森)
では、本日は以下の食物アレルゲンの変化(変性)のうち、「加熱」について学びましょう。
- 加熱
- 消化
- 発酵
・加熱について
加熱が食物アレルゲンに与える影響の一つは、「メイラード(アミノ-カルボニル)反応」です。
誰もが経験した事のある、肉やパンを焼いて、香ばしくなるという反応です。
これは、食べ物を煎ったり、焼いたりする事でタンパク質のアミノ酸と炭水化物の糖質(カルボニル基;>C=O)が反応し、メラノイジンと褐色物質が発生します。
この反応が起こると、アレルゲンコンポーネントのタンパク質は凝集し、アレルゲン性が強くなったり、弱くなったりします。
加熱によりアレルゲン性が高くなる例として、ピーナッツは煎る(ローストする)事によるメイラード反応が起こり、特異的IgEとの結合が強くなる事が知られています。
一方、鶏卵も加熱によりアレルゲン性が変化する事が知られている重要な食物アレルゲンです。
ただ、鶏卵が加熱により受ける影響は「凝固」になります。
この凝固は液体(ゲル状)から固体に変化する事を指します。
卵白の主要アレルゲンである、オボアルブミンは多くの遊離-SH基を持ち、加熱により分子間にS-S結合を生じやすいという特徴があります。
突然難しくなってしまったので、ちょっと解説
S-S結合とはジスルフィド結合といい、この結合によりタンパク質同士が強力にくっつき(結合し)ます。
つまり、タンパク質同士が強力に結合する➡️タンパク質同士の繋がりが強固になる
➡️凝固する
この変化により、12分ゆで卵白ではオボアルブミン量は生卵の約1/8000まで減ります。
ですが、ここまで読んでもらった方の頭の中は恐らく??となっているのではないでしょうか?
そうです、食物アレルゲンは加熱により常にアレルゲン性が低下するわけではないのです。
恐らく、加熱により食物アレルゲンであるタンパク質の立体構造が変化する事で、特異的IgEが結合し、アレルギー反応を起こすエピトープがピーナッツではくっつき(結合し)やすく、鶏卵ではくっつき(結合し)にくくなるのでしょう。
一方、オボムコイドは多くのS-S結合をタンパク質内に持ち、加熱により構造があまり変化しません。
オボアルブミンのように遊離SH基を持たない為、タンパク質同士が結合しやすいわけでもありません。
実際に、先ほどの12分ゆで卵白でもオボムコイド量は、1/8程度しか減らない事が分かっています。
その為、本日お伝えしたい事は
加熱により、アレルゲン性を持つタンパク質(アレルゲンコンポーネント)は変化(変性)する事があるけども、常にアレルゲン性が低下するわけではない事。
加熱に安定のタンパク質は、加熱によりアレルゲン性の変化が乏しい事。
の2点です。
この辺りは、分かりやすく説明するのが中々難しいですね。。。
一度に多くを解説すると、混乱してしまうので少しずつ解説したいと思います。
ではまた次の記事にて
コメント