進化するアナフィラキシーの診断基準

その他のアレルギー

ここ数日有名人のアナフィラキシーショックの報道がそこかしこでなされています。

今ではアナフィラキシーというと、重症のアレルギー症状との認識が一般的になってきていますが、最近アナフィラキシーの診断基準が変わった事をご存知の方は多くないのではないでしょうか?

2020年に世界アレルギー機構(World Allergy Organiztion)より新たにガイダンスが提示されているので、ご紹介します。

アナフィラキシーは「アレルゲンなどの侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与えうる過敏反応」と定義されています。

その中でも、血圧低下や意識障害を伴う場合をアナフィラキシーショックと言います。

以前アナフィラキシー診断基準は3つありましたが、最新の基準は2つに簡素化されています。

1.急速に進行する皮膚・粘膜症状(全身の蕁麻疹や口唇・舌の腫脹など)あり

 +a. 呼吸器症状(呼吸困難や低酸素血症、喘鳴等)

 +b. 循環器症状(失神や失禁、意識障害)

 +c. 消化器症状(重度の腹痛や反復性嘔吐)

のうち少なくとも一つを伴う

2.典型的な皮膚・粘膜症状がない場合でも

 対象の患者さんにとってアレルゲン(その可能性が高いもの)を摂取(接種)し、

  a. 血圧低下

  b. 気管支攣縮

  c. 喉頭症状

のうちいずれかが急速に発症した場合

以上が最新のアナフィラキシーの診断基準になります。

特徴は

  • 皮膚症状のある/なしで分けている点
  • アレルゲンとして疑わしいものを摂取(接種)したかを重視している点

だと思います。

皮膚症状のある/なしで分けている点に関して

アナフィラキシー反応の10-20%は皮膚症状を認めず、呼吸器症状や循環器症状が単独で出現する事があります。

つまり、

  • 皮膚症状あり➡️アレルギー反応の可能性:あり
  • 皮膚症状なし➡️アレルギー反応の可能性:なし

とは一概に言えません。

敢えて誤解を恐れずに表現するなら

  • 皮膚症状あり➡️アレルギー反応の可能性:高い
  • 皮膚症状なし➡️アレルギー反応の可能性:不明(分からない)

だと思います。

アレルゲンとして疑わしいものを摂取(接種)したかを重視している点について

いやいや、皮膚症状がなくても急に失神や意識障害などの循環器症状を認めたら、アナフィラキシーを考えるでしょ⁈と仰る方もいるかもしれません。

実はこの診断基準は、小児やアレルギー疾患がある方だけを対象にした定義ではありません。

その為、てんかん発作で意識を失っている場合や、心筋梗塞などでショックを起こしている事も想定しなければならないのです。

つまり、

  • 診断基準①患者さんの背景におけるアレルギー疾患:不明
  • 診断基準②患者さんの背景におけるアレルギー疾患:あり

と考えると分かりやすいかもしれません。

診断基準①患者さんの背景におけるアレルギー疾患が不明でも、皮膚症状がある事でアレルギーらしさup⤴️

診断基準②患者さんの背景におけるアレルギー疾患が分かっていて、アレルゲン摂取(接種)の可能性が高いなら、皮膚症状ない場合でもアレルギーらしさup⤴︎

実際の救急医療では、本当に色んな訴えや症状の患者さんでごった返しています。

そんな混沌とした中でアナフィラキシーを適切に診断し、迅速に治療する為に、今回のような簡便かつ明確な基準が必要です。

てんかんで意識を失っている患者さんにボスミン(エピペンの成分)を投与したら大変です(汗

ですので、この記事に目を通してくれた方がもし、アナフィラキシーを起こし救急室を受診するような場合、

  • アレルギーを元々持っているのか
  • 症状が出現する直前の行動や周囲の環境(周囲のアレルゲンとなるようなものの有無)はどうだったか

などを具に観察し、医師に伝えるよう努めてください。

そうする事で、医療者と一緒に大切な存在の命を守れたらば、私も嬉しいです。

では、また次の記事にて

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