大麦アレルギーかどうか負荷試験前に予測できる要因は?

食物アレルギー

小麦アレルギーを持つお子さんが学校で困る事の一つに、給食に大麦を使った麦ご飯が出てくるけど食べさせても大丈夫なの?という問題があります。

多くのお子さんは、大麦を使っている麦茶くらいは飲めるけれども、大麦は食べた事がないといった方が多いのではないでしょうか?

その場合は大麦の負荷試験を行い、食べれるかどうかを評価されているかと思います。

ですが、負荷試験も丸一日時間が掛かる為、出来れば負荷試験結果が陰性か陽性か結果が予測できると良いなと思われた親御さんは少なくないのではないでしょうか?

この点に関して、国立病院機構三重病院の坪谷先生達が報告した研究があるので、解説したいと思います。(小麦アレルギー患児における大麦アレルギー合併を予測する因子の検討)

この研究の要旨は、「大麦の摂取歴がない小麦アレルギーの患者さんに対して行なった負荷試験結果について後方視的に検討したもの」となっております。

最初に結論から述べたいと思います。

大麦負荷試験の結果が陽性になりやすい子の特徴は

・小麦アレルギーが重症である

・ω-5グリアジン特異的IgE抗体値が高い(3.2UA/ml以上)

・小麦特異的IgE抗体値が高い(44.1UA/ml以上)

です。

・小麦アレルギーが重症である場合

この点について彼らは、負荷試験で少量の負荷量により強い症状を呈すると高い数値をとるTS/Proという指標(モノサシ)を使って検討しています。

その結果の解釈は、ゆでうどん3g(少量の負荷試験;前の記事を参照)で局所に蕁麻疹を認める程度より重症度が高い(うどん3gより少ない量で局所の蕁麻疹を認める場合や、うどん3g摂取して、局所の蕁麻疹に加えて咳や腹痛などの更に強い症状が出る場合など)と、大麦負荷試験が陽性になる可能性が高くなると述べていました。

逆に、ゆでうどん少量がクリアできているお子さんは、大麦負荷試験をクリアできる可能性が高くなるとも考えられます。

・小麦やω-5グリアジン特異的IgE抗体値が高い場合

この点について、彼らは小麦の重要なアレルゲンコンポーネントであるω-5グリアジンと大麦のγ3ホルデイン等に強い交差反応性がある事を指摘しています。

難しいので言い換えますと、大麦のアレルゲンタンパク質(γ3ホルデイン)と小麦のアレルゲンタンパク質(ω-5グリアジン)の姿形が似ているので、身体が同じものと誤認識してしまってアレルギー反応が出るよ〜といった感じです。

一方、大麦特異的IgE抗体値では大麦負荷試験結果を予測できなかったという結果もなかなか興味深いところでした。

まとめです。

大麦負荷試験が陽性である事を予測する為には

1.小麦を少量するとアレルギー症状が誘発される事

2.小麦とω-5グリアジン特異的IgE値が高い事

が重要です。

勿論、例外が存在する事は多いにあり得ますが、この二つの要件を満たしている事は、大麦負荷試験で陽性となる可能性が高くなります。

この結論は私が勤めている施設でも同様に、小麦アレルギーの重症度に応じて大麦負荷試験の結果がある程度予測できているなという印象はあります。

逆に、小麦アレルギーで大麦が未摂取の患者さんのうち、これらの要件を満たさない場合は大麦の負荷試験を積極的に検討されても良いかもしれません。

皆んなと同じ釜の麦ご飯を食べる事ができるかもしれません。

ではまた次の記事にて

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