食物アレルギーのあるお子さん、多くの方が耐性獲得する一方で、アナフィラキシー等の強いアレルギー反応を認め、幼稚園〜小学校にかけてアレルギーが遷延するお子さんもいらっしゃいます。
特に体重が15kgを超えてきた場合、エピペンの所持が必要かどうか気になる親御さんは少なくないのではないでしょうか?
一般的にエピペンを持つとされるのは、アナフィラキシーの既往があるお子さんですが、処方するにあたっていくつかの条件(適応)が存在しています。
・アナフィラキシーによる”一般向けエピペン®︎の適応症状”の既往がある
・アナフィラキシーを発現する可能性が高い
・医師が必要とした場合
食物アレルギー診療ガイドライン2021 第7章 即時型症状の重症度判定と対症療法
それでは、一つづつ解説していきたいと思います。
アナフィラキシーによる”一般向けエピペン®︎の適応症状”の既往がある
このうち”一般向けエピペン®︎の適応症状”は日本小児アレルギー学会により、以下のように定義されています。
エピペン®︎が処方されている患者でアナフィラキシーを疑う場合、下記の症状が一つでもあれば使用すべきである。
https://www.jspaci.jp/gcontents/epipen/
腹部の症状:繰り返し吐き続ける、持続する強い(我慢できない)お腹の痛み
呼吸器の症状:喉や胸が締め付けられる、声がかすれる、犬が吠えるような咳、持続する強い咳き込み、ゼーゼーする呼吸、息がしにくい
全身の症状:唇や爪が青白い、脈を触れにくい・不規則、意識が朦朧としている、ぐったりしている、尿や便を漏らす
これらの症状が過去の病歴や負荷試験で認めた場合はエピペン®︎の所持を検討する必要があります。
アナフィラキシーを発現する可能性が高い
アナフィラキシーを起こしたことがない子でもエピペン®︎の所持を勧める場合は以下の通りです。
・呼吸器症状、循環器症状の既往
・原因抗原の特異的IgE抗体値が強陽性
・コントロールできていない気管支喘息の合併
・微量で客観的な症状が誘発される
呼吸器や循環器症状は生命に関わるので、厳密にはアナフィラキシーの定義を満たさない場合で処方を検討する必要があるかと思います。
一方、「原因抗原の特異的IgE抗体値が強陽性」については、補足が必要だと思います。
もし、拠点病院などの特異的IgE抗体値が強陽性でも負荷試験を積極的に行っている施設に通院中の方は、しっかりと評価してから処方を受けるのが望ましいと思います。
逆に、地方や専門医が少ない地域では重症が予測される特異的IgE抗体値が強陽性の負荷試験は、あまり推奨されていない場合があります。その為、「原因抗原の特異的IgE抗体値が強陽性」かつ未摂取の食材に対してもエピペン®︎の処方の適応(条件)を満たすものと考えます。
ただし、指導する側の視点としては、アナフィラキシーやそれに準じた症状を経験した事がない親御さんにエピペン®︎の接種が本当に可能なのか?という点に注意して指導を行う必要があります。
また、「微量で客観的な症状が誘発される」場合は、中等量〜大量に誤食した際に強いアレルギー症状をきたす可能性があり、注意が必要です。
この「微量」に正確な定義はありませんが、食物アレルギー診療ガイドラインの負荷試験における「少量」の設定が1g(ml)〜と設定されています。
その事を鑑みると、「微量」は1g未満の量と捉えるのが妥当かもしれません。
医師が必要とした場合
こちらの場合は、以下の通りです。
・患者や保護者の希望(※注意書きあり)
・緊急受診する医療機関から遠方に在住
・宿泊を伴う旅行など
「患者や保護者の希望」については「ただし、使用する適応条件を十分に理解して、緊急時に自ら(保護者が)使用する意志があることを確認した上で処方すること」と注意書きがなされています。
この点について、以前私の外来にて「御守り代わり」に「念の為」所持しておきたいから、処方をお願いします。と処方を求められ、お断りした経験があります。
勿論、重症度的に不要であった事は言うまでもありませんが、エピペンは「使用する為」に所持するのであり、「念の為」に所持する薬剤ではありません。
また、「所持するだけ」で効能を得られる「御守り」と「使用しないと」効果を発揮しない「エピペン®︎」は同列ではありません。
アナフィラキシーを起こし、苦しんでいる我が子に救命目的にエピペン®︎を接種する(針を刺す)という事は並大抵の「覚悟」なしでは出来ない行為です。
処方する側も指導する側も、処方を受ける側(主にご両親)の覚悟の度合いを確かめながら、時にその度合いを引き出すような指導が必要だと思います。
最後の方にやや厳しい事を書いてしまいましたが、以上参考になれば幸いです。
ではまた、次の記事にてお会いしましょう。
追記・修正)
2022/2/28
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